医療2025.3.13

オノマトペの魅力と言語聴覚療法への応用

#オノマトペ #聴覚 #発話 #言語機能 #失語症

感性のことばと失語症 ~オノマトペとは?~

 「オノマトペ」という言葉を聞いたことがありますか?オノマトペとは、擬音語や擬態語の総称で、「ドンドン叩く」「くねくね曲がる」といった、音や動き、状態を言葉で表す表現のことです。日本語には驚くほど多くのオノマトペがあり、私たちは日常的に使っています。(実は、英語にはそれほど多くありません。)

 もしオノマトペがなかったら、「しくしく泣く」「わんわん泣く」といった表現をどう伝えればよいでしょう?「悲しそうに泣く」「大声で泣く」と言い換えることはできますが、オノマトペほど情景を鮮やかに描くのは難しいですよね。

 オノマトペは「感性のことば」とも呼ばれ、聴覚・視覚・触覚といった感覚情報を直感的に表現し、理解しやすいという特徴があります。

失語症とオノマトペ

 脳の病気やケガでダメージを受けると、言葉をうまく使えなくなる「失語症」になることがあります。失語症は「聞く・話す・読む・書く」といった言語機能のすべてに影響を及ぼし、日常生活にも大きな支障をきたします。

 私たちの研究では、言葉が思うように出てこないときに、オノマトペを活用するケースが多いことが分かりました。
 例えば、「回っている」と言いたいときに「くるくる」、「風が吹いている」と伝えたいときに「ビューっとね」と表現するなど、動詞や名詞で説明しにくい場面でも、オノマトペなら伝えやすいのです。正確な言葉が出なくても、オノマトペを使えばおおよそのニュアンスを伝えることができます。

 オノマトペは、失語症による発話の難しさを補う手助けをしてくれる...そんな可能性が見えてきたのです。

おススメの学問

橋本 幸成
准教授

保健医療学部 言語聴覚学科

失語症学・認知神経心理学を専門とし、言語障害のメカニズムやコミュニケーションの可能性について研究しています。特に、失語症のある方々がどのように言葉を取り戻し、私たちのトレーニングやアイデアによって言語の回復をどこまで支援できるかに関心を持っています。

研究以外では、バスケットボールで体を動かしたり、漫才を見て笑ったり、登山で自然を満喫したりするのが好きです。言葉と脳の関係を探求しながら、日常ではユーモアとアクティブな時間を大切にしています。

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