外国語学部

中国語学科

Department of Chinese Language Studies 新宿キャンパス

学科からのお知らせ

中国語学科:中国語キャリアチャレンジ支援「中国語を仕事にする」ーゲーム翻訳という仕事を知る

2月2日(月)、外国語学部中国語学科で「中国語を仕事にする ― ゲーム翻訳という仕事を知る」と題した講義が行われました。講師は翻訳者として幅広い分野で活動し、現在は教育の現場にも携わる金子真生氏です。本講義では、中国語学習の経験がどのように職業へと結びついていったのかを、金子氏自身の歩みを軸に紹介しながら、ゲーム翻訳の実際について具体的に語られました。

講義の前半では、自己紹介を兼ねてこれまでのキャリアが振り返られました。大学では国文学を専攻し、学部2年次から第二外国語として中国語学習を開始しました。修士課程で中国学を学びながら高校で国語を教える一方、自身の中国語力に課題意識を持ち、通訳学校や各種勉強会に積極的に参加したそうです。通訳案内士資格を取得した直後に東日本大震災を経験し、その後、ニュース翻訳やゲーム翻訳の仕事へと活動の幅を広げていった経緯が語られました。現在は教育の仕事が中心であるものの、翻訳の現場で培った感覚や技術は、今も大きな支えになっているといいます。

続いて、中国語を生かした仕事の1つとして「ゲーム翻訳」が取り上げられました。ゲーム翻訳とは、単にセリフを訳すだけではなく、UI(ユーザーインターフェース)、スキル名、キャラクター名、ストーリーなど、ゲーム全体の世界観をターゲット言語にローカライズ(現地化)する仕事です。できるだけオリジナルの国・文化の雰囲気を保ちながら、日本のプレイヤーが違和感なく楽しめる表現に仕上げていくことが目標だと説明されました。
具体例として、自身も翻訳に携わった中国発の人気ゲーム『荒野行動』や『第五人格』が紹介され、渋谷をモデルにしたマップや精神病院を舞台にした世界観など、中国ゲームならではの発想がどのように日本向けに調整されているかが解説されました。また、今春販売予定の台湾発のゲーム『OPUS:Prism Peak』では、映像作品『青春18×2 君へと続く道』とのタイアップ事例が紹介され、ドラマのワンシーンがゲームの世界観づくりやプロモーションと結びついている点が示されました。近年は、中国や台湾のゲームが日本市場に多く進出しており、日本の大手企業も自社開発に限らず海外展開を進めているという業界動向も共有されました。

講義の中盤では、ゲーム翻訳の具体的な作業内容について詳しい説明がありました。翻訳にはmemoQなどの翻訳支援ソフトが用いられ、「魔法」「スキル」「技」といった用語の中からどれを採用するか、さらにその枠組みの中で「スキル名」をどのように統一していくかが重要になるそうです。
まず全体の用語の「骨格」を作り、そのルールに沿って訳語を積み重ねていきます。この用語設計の工程こそが、ゲーム翻訳の醍醐味であり、最も楽しい部分でもあると語られました。一方で、表現が長すぎると覚えにくく、UI表示にも不向きであるため、限られた文字数の中で最適解を探る工夫が求められます。中国文化特有の存在である「年獣」のように、日本語にそのまま置き換えるか、別の表現を探るかといった判断も、ローカライズの難しさと面白さを象徴する例として紹介されました。

翻訳の実務面についても具体的な話が続きました。翻訳は専用エディタ上で進められ、セリフのみが渡されて発話者や口調が分からない場合も多いため、誰の発話かを示した資料などを併用しながら文脈を考慮して訳文を組み立てていくといいます。やや特殊な用語や今後も繰り返し登場しそうな表現については、訳語を決めた段階で用語集に登録しておくことで、次に同じ語が出てきた際に過去の訳例をすぐ参照できます。
こうした翻訳メモリや用語集を蓄積していくことで、訳語の一貫性と精度が高まり、作業効率も向上していく点が強調されました。AI翻訳の進歩についても触れられましたが、最終的な役割設定やニュアンス調整は依然として人間の判断が不可欠であり、現時点では完全な代替は難しいという現場感覚が示されました。

後半の質疑応答では、第二外国語として中国語を選んだ理由や、国文学専攻で培った力が翻訳にどのように生きているかといった質問に加え、講義内で触れられた国家資格である通訳案内士試験についても質問が寄せられました。これを受けて、語学力だけでなく、日本の地理・歴史・文化に関する知識をどのように身につけてきたかについて、具体的な学習経験が紹介されました。
地理については、日本の白地図を使って各地域の産物や特徴を書き込む練習を繰り返したこと、歴史については出来事を個別に覚えるのではなく、全体の流れを意識して整理することを重視したことなど、地道ではあるが確実に力がつく方法が語られました。通訳案内士試験は範囲が広く負担も大きいものの、過去問を丁寧に分析し、出題傾向を踏まえて対策すれば、必要以上に構える必要はないという助言もありました。

さらに、現在取り組んでいる中国語学習法として、短い中国語小説、いわゆる「ショートショート(微型小说)」を読む練習が紹介されました。数ページ程度の短い作品を題材に、タブレット端末に読み込み、GoodNotes などのノートアプリを使って本文に直接メモを書き込んだり、辞書の説明や用例を付けたりしながら読み進めているということです。意味は分かっているつもりでも、声調があいまいな語には声調だけを書き足すなど、「分かったつもり」を1つずつ減らしていく読み方を意識していると述べられました。短い作品であれば文脈全体を把握しやすく、語彙や表現を丁寧に確認できる点が利点であり、時間に余裕のある大学生だからこそ、こうした読み方を大切にしてほしいそうです。

耳を鍛える学習法としては、Podcastの活用も勧められました。長時間にわたる自然な会話が特徴の「聊聊东西」は、リップノイズや笑い声も含まれるため、教科書的ではない生の中国語に触れる素材として有効だといいます。無料で利用できる「TED中文」は、内容と表現の両面から学習しやすく、「Chinese大鹏说中文」は1回約12分と短く、最近の中国語表現や新しい語を比較的ゆっくり解説してくれるため、同時通訳の練習にも適していると紹介されました。
加えて、大学時代には通学時間を利用して『中国語ジャーナル』に掲載されていたニュースのディクテーションに取り組んでいた経験や、HSK対策の音声教材、人民日報の評論コラムを原文と訳文で読み比べる学習法など、お金をかけずに時間を使って力を伸ばす方法も提示されました。

講義の最後には、「プロを目指すなら、一時的に集中的な努力が必要な時期があるが、好きであればその苦労も乗り越えられる」という言葉で締めくくられました。中国語と日本語の両方に楽しみながら触れ続けることの大切さが伝えられ、中国語を生かした仕事を志す学生にとって、現実的かつ励みになる講義となりました。

※本講演は、「中国語キャリア チャレンジ支援特別企画」(2025年度目白大学特定学修支援団体チャレンジ企画)の一環として実施されました。
https://mejiro-chinese.jp/special2025/

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