1月16日(金)、外国語学部日本語・日本語教育学科専門科目「異文化接触論」の秋学期最終回の授業に、冒険家の荻田泰永氏をお迎えしました。
自ら北極探検家を名乗る荻田氏は、カナダ北極圏やグリーンランド、北極海を中心に主に単独徒歩による冒険行をほぼ毎年行っており、世界初のルートでの単独歩行達成など、数々の世界的記録を残しています。
今回の授業では、荻田氏が昨年訪れたグリーンランド最北部にあるアノーイトー岬に伝わる「岩の伝承」めぐる、自身の体験をお話しいただきました。それは、近隣の村に住む日本人から荻田氏が以前に聞いた、岬にある1つの岩に纏わる言い伝えです。昔、シロクマを息子として育てていたお婆さんが、シロクマが殺されたことを知らずに「我が子」の帰りを待ち続けるうち、岩になったという物語でした。
物語に興味をひかれた荻田氏は、実際に岩に「会い」に1人徒歩で現地へ向かいました。
マイナス約20度の氷の平原を何日もかけて歩いた末、ついに岩を見つけた時に思わず涙が流れ出た場面を動画で見せてくれました。荻田氏は、口伝えで語り継がれた物語が時代や文化の違いを超えて人の心に働きかける事実の重みを強調されていました。そこに込められた、子に対する愛情や他者への慈しみといった感情は、人間にとって普遍的なものであり、それが物語が生まれて以来500年にわたって共有されてきたことを考えれば、同じ現代に生きる我々が分かり合うことは、決して難しいことではないはずだと荻田氏は言います。
ともすれば些末な違いから国や個人同士がすれ違うことの多い昨今にあって、違いばかりを見るのでなく、人間として通じ合う根源的な部分をもっと大切に考えるべきだという荻田氏の経験に根ざしたメッセージが伝わってきました。
最後に荻田氏は、アメリカのある詩人の言葉を引用し、冒険とは自らの中で鳴り響く「魔神的な呼びかけ」に従って行うものでありながら、結局はその経験を他者に向けて語るために帰ってくることに意味があり、その点で冒険は、きわめて社会的な営みなのだと述べられました。
国内外のメディアからも注目される日本唯一の「北極冒険家」である荻田さんが、こうして学生に語りかけるために足を運んでくださる心意気を、学生たちもしっかりと感じ取っていたようでした。
荻田泰永氏プロフィール
カナダ北極圏やグリーンランド、北極海を中心に、主に単独徒歩による冒険行を実施。2000年より2019年までの20年間に16回の北極行を経験し、北極圏各地をおよそ10,000km以上移動。世界有数の北極冒険キャリアを持ち、国内外のメディアからも注目される日本唯一の「北極冒険家」。2016年、カナダ最北の村グリスフィヨルド〜グリーンランド最北のシオラパルクをつなぐ1000kmの単独徒歩行(世界初踏破)を2018年1月5日(現地時間)、南極点無補給単独徒歩到達に成功(日本人初)。2018年「植村直己冒険賞」受賞。2021年神奈川県大和市に「冒険研究所書店」開業。2023年著作「PIHOTEK 北極を風と歩く」が第28回「日本絵本賞大賞」受賞。TBS「クレイジージャーニー」NHK「ニュースウォッチ9」NHK「ファイト!糸くずのような命の唄」などで特集番組多数。
(荻田泰永氏公式ウェブページより転用)

