保健医療学部作業療法学科 重村淳教授が国際連合(国連)注1)本部のシンポジウムで基調講演を行いました。講演タイトルは「国連平和維持活動 注2)隊員のメンタルヘルス上の挑戦:現在分かっていること、分からないこと(原題:Mental health challenges of peacekeepers: What we know and don't know)」です。
2月7日(現地時間)に開催されたシンポジウム「PKO兵士のためのメンタルヘルス戦略の開発(The development of the mental health strategy for uniformed peacekeepers)」は、PKO隊員のメンタルヘルス(心の健康)向上の方策を話し合い具体化していくものでした。ドイツ・イスラエル・ルワンダの政府代表部が中心となり、PKO隊員の安全管理を担当する国連本部の部署が主催しました。現地開催が困難な状況のためオンラインでの講演となり、世界各地から約150名の関係者が参加しました。
PKO隊員は、紛争や災害が起きた後の過酷な環境において、平和を守るという重要な任務を担っています。復興支援や開発などの人道的支援を行う一方で、武装攻撃を受けると生命の危険を伴う、極めて過酷な任務です。重村教授は、災害現場で働く人々やPKO隊員の研究に長年携わってきました。PKOの任務が隊員の心に与える影響を解説し、これまでの研究報告のデータをまとめ、未解決の課題が何なのかを説明しました。
シンポジウムでは、他にコンゴ民主共和国PKOにおける専門家からの中継報告、ドイツ・イスラエル・ルワンダの専門家からの活動報告もありました。今後、会合を重ねてPKO隊員のより良いケアに向けた提言をまとめる予定です。
語句解説
注1)国連
国連とは、国際平和と安全の維持、経済・社会・文化・健康などに関して国際的に協力するための組織です。日本をはじめとして世界の193か国が国連に加入し、国連本部があるアメリカのニューヨークに国連代表部を置いています。WHO(世界保健機関)やユネスコ(UNESCO: 国連教育科学文化機関)という言葉をよくニュースで見ますが、これらは国連の専門機関と呼ばれる組織です。
国連の取り組みとして知られているのが、SDGs(エスディージーズ)です。SDGsは Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称です。人類が直面している課題は紛争、貧困、環境、差別など多多種多様です。SDGs の目標は、このような 17個の課題を2030年までに、世界の誰一人も取り残されないよう達成することです。なお本学でも、SDGsに関するさまざまな取り組みを行っています。
目白大学・目白大学短期大学部×SDGs
注2)国連平和維持活動
英語の頭文字をとってPKO (peacekeeping operations)と呼ばれています。世界の各地では、戦争、内戦、テロリズムなどの紛争や災害による惨事が絶えません。PKOは、紛争の悪化を防ぐため、国連の指揮のもと平和を維持することが目的です。具体的には、治安の維持、停戦の監視、復興の支援などが行うために、世界各国から兵士や民間人が派遣されています。日本が参加した最初のPKOはカンボジアでの選挙監視活動(国連カンボジア暫定統治機構:UNTAC、1992~1994年)で、現在も続いているものは南スーダン共和国独立後の支援活動(国連南スーダン共和国ミッション:UNMISS、2011年~現在)があります。