保健医療学部

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作業療法学科・増田知之教授のインタビュー記事が7月9日付の環境新聞に掲載されました

  • 取材に応じる増田教授
7月9日付の環境新聞
7月9日付の環境新聞

保健医療学部作業療法学科の増田知之教授は、筑波大学・茨城県立医療大学の研究チームとともに、人工有機ヒ素の不法投棄による健康被害について研究を進めています。今回、その研究に関するインタビュー記事が環境新聞(2025年7月9日付)に掲載されました。

本研究の背景には、2003年に茨城県神栖市で発生した有機ヒ素中毒事件があります。
この事件では、何者かによって環境中に不法に廃棄された人工の有機ヒ素化合物「ジフェニルアルシン酸(DPAA)」による健康被害が報告され、社会的にも大きな関心を集めました。
とくに小児期にDPAAに曝露した30名の住民には、知的障害、脳血流の低下、てんかん、頭痛など、深刻な中枢神経症状が確認され、これらの症状は主に小児期にDPAAが混入した井戸水を飲用したことによって生じたと考えられていました。しかしながら、その中には、母親が妊娠中にDPAAを含む井戸水を飲用していたケースも含まれており、胎児期からへその緒(さい帯)を通じてDPAAに曝露していた可能性も指摘されていました。胎児期の脳は出生後と比較して非常に脆弱であるため、この時期の曝露がより深刻な健康被害を引き起こした可能性も否定できません。

増田教授らはDPAAが母体から胎児に実際に移行するか検証するため、DPAAに曝露した母親の出産時のさい帯を高精度の分析機器で調べました。その結果、DPAAに曝露した母親のさい帯中にはDPAAが含まれることを発見し、母体から胎児にDPAAが移行することを実証しました。さらに、げっ歯類を用いた動物実験を行い、胎児の血液中には母体の約40%、脳内には約10%の濃度でDPAAが移行することも明らかにしました。

これらの成果は、2025年5月26日にNeuropsychopharmacology Reportsのオンライン版に掲載されました。 本研究成果は、DPAAによる次世代への曝露リスクを裏付ける重要な知見であり、環境汚染物質が母子間に及ぼす影響を考える上で意義深いものと言えるでしょう。
なお、本研究は環境省の支援を受けて行われました。

  • 論 文 名 :『The Organic Arsenic Compound Diphenylarsinic Acid Transfers From the Mother to the Fetus via the Placenta in Mammals』
  • 筆  者:Tomoyuki Masuda, Kazuhiro Ishii, Tomohiro Nakayama, Nobuaki Iwasaki
  • 掲 載 誌 :Neuropsychopharmacology Reports
  • 掲載年月:2025年5月

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