1月26日(木)保健医療学部言語聴覚学科の「地域言語聴覚療法学」で、失語症当事者の池田博之氏による『笑顔の授業』が行われました。池田氏は、勤務先である東京海上日動火災保険株式会社の業務として講演活動をしており、当日は奥さまと一緒に、はるばる名古屋からいらしてくださいました。
講義は、「毎日笑っていますか?」という学生への問いかけで始まりました。約7年前、脳梗塞によって失語症を発症し、今でも、言いたいことが言えない、相手の言っていることが理解できないという症状に悩まされています。でも、池田氏は「悔しい時、つらい時、どん底の時、いろいろあるけれど、でも、負けるな、笑顔で頑張ろうといつも心に思っている」と続けます。
失語症は、聴いて理解する・話す・読んで理解する・書く、という基本的な言語機能がすべて損傷をうけるため、コミュニケーションに支障を来し、発症後に元の職場に戻ることは非常に困難です。
しかし、池田氏は「万策尽きた後の最後の一手がある」ということばを胸に、諦めない強い気持ちでリハビリテーションに取り組み、約5年前に復職されました。池田氏は「がんばろう」ではなく、支えてくれる人がいるから「がんばれる」と何度もおっしゃいます。会社の方々、ご家族、そして言語聴覚士、多くの人に支えられているということだと思います。発症から現在までの症状とその時々の気持ち、復職に至る経緯と復職後のお話、さらに奥さまからの言語聴覚士の卵への期待と励ましの言葉を学生は真摯なまなざしで熱心に聞いていました。
後半は、池田氏から出されたテーマでのグループ討議。学生は、失語症のある人がコンビニやコーヒーショップで困ること、復職に必要な支援、失語症のある人とのコミュニケーションの取り方、そして池田氏が「笑顔の授業」で伝えたいことなどについて発表しました。池田氏は一つひとつにコメントし、さらに、ご自身の考えも伝えてくださったことで、学生は深い学びを得ることができました。
池田氏、奥さま、本当にありがとうございました。
失語症についての特集で、池田氏も出演されている番組がYouTubeで視聴できます。
少しでも関心を持たれた方は、ぜひご視聴ください。
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身を乗り出すように講義に集中している学生 -
グループ討議中の学生を見守る池田氏