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Department of Social Information 新宿キャンパス

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社会情報学科「ファッションブランド戦略論」授業レポート "メーカーズシャツ鎌倉のブランド戦略"

ファッション関連企業の方を講師としてお招きし、企業のマーケティング戦略についてご講演いただく「現代社会1」(ファッションブランド戦略論)」。
5月21日(金)の講義では、メーカーズシャツ鎌倉株式会社 人事採用担当の鈴木準氏(当時)にお越しいただき、「メーカーズシャツ鎌倉のブランド戦略」をテーマにお話しいただきました。

「メーカーズシャツ鎌倉」の授業レポート

同社は1993年、神奈川県鎌倉市にて創業しました。ブランド名である「鎌倉」は世界でも通用する都市名であることから、「鎌倉シャツ」の愛称で親しまれているブランドです。

新型コロナウイルスの影響によりアパレル業界の苦戦が強いられる中、同社はターゲット層を設定してポジショニングを図るとともに、他社が模倣できない戦略を用いて着実に売り上げを伸ばしています。その理由として挙げられるキーワードがSPAです。SPAとは小売業が卸売りを介すことなく、自社の製品を自前の小売店で販売する業態のことであり、現在ではGAPやファーストリテイリングなど大手アパレル企業が強みとしていますが、同社は創業当初からいち早く取り組んできたという歴史があります。このSPAはそれまでの国内アパレル業界における流通の概念を覆したものであり、他社との差別化に成功し優位性を構築したと言われています。

本来、アパレル業界(とりわけシャツなど定番となる商品)において差別化を図ることは容易ではありません。最も重要なのは製品の品質と価格ですが、この2つを両立させることは極めて困難です。一般的なアパレル企業の戦略として、シャツは人件費の安い海外で生産し、コストを抑えます。さらに商品の原価率は驚くほど低く、多少のセールをしても利益は出る仕組みとなっています。
ところが同社は業界の常識を覆すイノベーティブな戦略を行いました。それはあえて人件費の高い日本国内で生産しながら(高品質を維持しつつ)、商品の原価率を高める、というものです。すなわちマーケティングのProductとPriceを再検討することで、上質なシャツを誰もが気軽に購入できる価格で提供する仕組みを実現しました。さらに同社はアパレル業界における社会的課題を解決するためのさまざまな施策を行っています。
それは「売れ残りを出さない」仕組みです。SPAは大手ファストファッションも取り入れており、近年、大量生産による売れ残りの廃棄処分が問題となっています。しかし同社の場合は多品種少量生産を行うことで「売り切れ御免」として余剰在庫を防ぐことができます。さらに毎週のように新商品を販売するので、顧客を飽きさせない(来店や購入頻度の向上へとつなげる)戦略を構築しています。それらを可能とした背景には生産から販売までの(SPAの)リードタイムに秘密があり、通常のアパレル企業では商品化に半年~1年ほどかける期間を、同社はたったの1~2カ月へと短縮したそうです。これらの戦略を駆使した結果、毎年の流行やトレンド、気候変動にも柔軟に対応できるようになりました。
同社は国内に提携工場があることを強みとしており、大手ブランドの生産ラインに同社の商品を委託生産(OEM)するなど、長年をかけて信頼関係を構築した工場との協働により「メイドインジャパン」の鎌倉シャツを80カ国へと販売することに成功しています。「世界で活躍するビジネスパーソンをシャツで応援する」をモットーに、同社の唯一無二の最高のシャツづくりにまい進してきた姿を垣間見ることができました。

今回の講演は、同社の戦略についてのお話もさることながら、受講生を引き込む鈴木氏のプレゼンテーション技術が素晴らしく、90分があっという間に感じてしまいました。当日キャンパスへ来訪いただいた人事の河西氏、吉村氏、肥合氏の方々がとても親しそうにされていることがZoomの画面からも伝わってきました。きっと同社の従業員は自社に誇りを抱いているからこそ、顧客に対して誠実な思いが伝わり、その思いこそが「世界のKAMAKURAシャツ」として人気であり続ける理由なのだろうと、感銘を受けました。

(社会情報学科3年 余川愛奈)