遠隔授業|オンデマンド型
社会情報学科
「サービスマーケティング」
担当:柳田 志学専任講師
<授業の概要>
聴覚障がいの受講生が周囲の支援を必要とせず、ストレスフリーで受講できる、ユニバーサルデザインを目指した授業形式(音声文字変換ツールを用いた字幕入り授業)を提示しています。この授業形式は聴覚障がいの受講生のみならず、健聴者や留学生の受講生からも好評で、対面授業においてもさまざまな形で応用できる可能性を秘めています。
<遠隔授業について>
この授業形式は、聴覚障がいの受講生が健聴者の受講生と同じタイミングで受講できることを目的として実施しているものです。 一見すると複雑な方法に見えますが、特に専門的な知識を必要とせず、複数のソフトウェア(Googleドキュメントの音声文字変換ツール、OBS Studioのクロマキー合成など)を用いて、収録した授業に字幕を盛り込んだものを受講生に提供しています。これらのツールを用いることで、教員の喋るスピードとほぼ同時に、かなり精度の高い音声文字変換による字幕が表示されるようになっています。
この授業形式の特徴は、無料ですぐに利用可能なソフトを用いて誰でも実施できることです。字幕の誤変換は、個人差はあるものの1回の授業(90分間で2万文字程度)につき10~20箇所程度で済みます。授業後に第三者が文字起こしをする時間と労力を考えると、遥かに効率的な授業形式となりました。 聴覚障がいの受講生が字幕なしの遠隔授業を受講する場合、(情報保障がないことから)その場で受講できず、どうしても遅れて受講することになります。しかし、この方法であれば周囲の支援を必要とせず、ほかの受講生と同じタイミングで受講し、同じタイミングで質問をする(疑問点を解消する)ことができます。この形式は言語の設定を変えることで、日本のみならず、世界中のあらゆる教育機関においても利用できるという特徴もあります。
およそ1年間、この形式を実施した結果、予想外の効果をもたらしました。それは聴覚障がいの受講生だけではなく、健聴者の受講生にも「理解が深まる」と好評だったことです。とりわけ専門的な内容を取り扱う講義の場合、字幕により理解促進につながるということが判明しました。よく考えてみると最近のTV番組やYouTubeは、その多くがテロップにより視覚的な情報を提供していることから、大学生の世代にとってはむしろ見慣れた形式なのかもしれません。それだけではなく、日本語を学んでいる留学生の受講生にとっても有効なツールだということにも気づかされました。
この形式は、決して遠隔授業のみにとどまるものではありません。もともと大教室での講義科目やゼミナールなど少人数の演習科目を含めた、さまざまな対面授業において用いることを想定していました。例えば教室でGoogleドキュメントの画面を共有し、ノートテイクの補助として用いる、ゼミナールにおける議事録や卒業論文の指導において用いるなど、幅広い可能性を秘めていることを実感しています。
なお、担当教員はこの授業形式(編集作業など)を実施するにあたり、自身の滑舌の悪さや喋るスピード、口癖などを矯正することができ、貴重な経験となっています。
<学生の声>
- 字幕があることで、より分かりやすい授業になっていると思う。(健聴者の受講生)
- 耳馴染みがない専門用語も、字幕と先生がしてくださる字幕修正のおかげですんなり入ってくるので、一番受講しやすかった。(健聴者の受講生)
- 字幕があること、動画を止めてメモを取ることができることなど、遠隔授業ならではのメリットが多かった。(健聴者の受講生)
- 対面授業では、ノートテイカーの方がすべての情報を書ききれていないこともあったが、遠隔授業では、健聴者と変わらない情報量を得ることができ、本当にうれしかった。(聴覚障がいの受講生)
- 字幕があり、本当にありがたいと思った。日本に1年も滞在していないため、日本語の表現が苦手だが、頑張りたいと思った。(交換留学生)