4月19日(水)、日本出版学会は第44回日本出版学会賞(2022年度)を発表しました。
このうち、学会の機関誌『出版研究』に掲載された学会員の公募論文を対象に、2年に1回選考・授与される清水英夫賞(日本出版学会優秀論文賞)を、人間学部子ども学科の山中智省専任講師が執筆した『「ライトノベル」が生まれた場所―朝日ソノラマとソノラマ文庫』(『出版研究』第52号掲載)が受賞しました。
受賞論文
「ライトノベル」が生まれた場所
―朝日ソノラマとソノラマ文庫
論文概要
朝日ソノラマのソノラマ文庫は、自社の単行本叢書の文庫化を企図して1975年に創刊を果たし、2007年まで存続した若年層向け文庫レーベルである。本稿では、ソノラマ文庫の創刊から全盛期に至る1970~80年代を射程に、同文庫が「ライトノベルの一源流」と見なされる特質をどのように形成したのかを明らかにしていく。また、とりわけ1980年代後半の動向をもとに、ソノラマ文庫の戦略面における課題とは何かに焦点を当て、その考察を試みる。
審査報告
1980年代には「ライトノベルの一源流」を築きながらも90年代にはその勢力を維持することが出来なかった朝日ソノラマ文庫の戦略面に着目し、全盛と衰退を歴史的経緯に添いながら検証するという試みはライトノベルという分野の研究の幅と奥行きを深めた研究といえる。中でも文献調査に加え、おそらくあと10年遅かったら取材が不可能であったと思われる朝日ソノラマに関わった編集者の証言が貴重なデータとなっていることは高く評価したい。対象候補論文の中でも学術論文としての成果と独自性は高く、清水英夫賞に値する。今後の研究にも期待したい。